平安時代にお香が流行ったまさかの理由!お香の種類と貴族の使い方
源氏物語を読んでいるといろいろな場面ででてくるのがお香。
平安貴族には欠かせないアイテムですが、そもそもどうして平安時代の暮らしではお香が盛んに使われるようになったのか?
そこで今回は平安時代のお香のお話です。
平安時代にお香が流行った理由
源氏物語を読んでいるとあっちでもこっちでも、高貴な人が出てくるたびに香りのことが書かれています。
御簾の中からお香のいい香りが漂ってきて・・・
とかとか、とにかくものすごくお香をたいていた様子が伺える。
さすが平安貴族、なんて優美な暮らしをしてるんだ!
と雅な雰囲気を醸し出すにはもってこいのアイテムなんですが、
そもそも、どうして平安時代はこんなに盛んにお香が使われていたんだろう?
もちろん現代だって香水とかルームフレグランスとかいい香りの柔軟剤とかいろいろ流行ってる。
でも、平安貴族のお香の使い方ってあちこちにたっぷり匂いをつけるし、それもサラッとではなく時にはお香を焚き蒸して色が変わるくらい香りをつける・・・
平安貴族のお香の使い方は現代だったら完全にスメハラレベルだと思われる。
ということで、平安時代のお香の本当のところを調べてみた。
平安貴族にとってのお香
まず、日本にお香が伝わったのは奈良時代。
日本に唐から仏教が伝来した時にいっしょに香木が入ってきたといわれています。
なので、最初は香りを楽しむというより宗教的な意味合いが強く、魔よけなんかにも使われていたんだとか。
それがだんだんと上流貴族の間でおしゃれやたしなみとして使われるようになっていきました。
清少納言は枕草子の中の「心ときめきするもの」の中で
なんて書いてます。良い薫物を焚いて、ひとり横になっている時。
髪を洗い、お化粧をして、お香の香りのする衣を着る時。
誰も見ていない所でも心の中はとてもはずんでいる。
そして、お香の原料になる香木は日本では手に入らず輸入品だったのでとても高価。
そんなお香を手にできるのは高貴な人の証というわけです。
まさに私たちがイメージする優雅で贅沢な平安貴族の暮らしぶり。
が、しかし!
平安貴族の間でお香が盛んに使われたのにはもう一つ大事な理由があったんですよ。
それがなんと・・・
そう、そうなんですよ、平安時代のお香は体臭をごまかすために貴族には絶対必須のアイテムだったんですよ。
なんとも残念な話なんですが、あの優美な平安絵巻のイメージとは裏腹に平安貴族はものすごーく臭かったらしい・・・
トレイも家の中の大きな部屋の一角でするので貴族の家はお屋敷そのものがかなり臭かったのでは?といわれています。
平安時代のトイレ事情についてはこちらに書いてるのでどうぞ↓
そんなわけで、
平安時代の貴族たちはお香を焚いて部屋の中をいい香りたっぷりにするのはもちろん、体や髪、衣服にもお香の香りをうつして生活してました。
なぜなら臭いから!!
平安時代のお香の種類
で、現代ではお香というと種類がいろいろあるんですが、平安時代に使われていたお香は練り香というものでした。
練香は平安時代には「薫物(たきもの)」とよばれていました。
お香の原料になったのは沈香や丁子、白檀、甲香などの香木です。
平安時代のお香の作り方は、香木を粉末にして混ぜ合わせて蜂蜜や梅の果肉といっしょに練り合わせたそう。
平安時代のお香には基本の調合方法があって、それを「六種の薫物(むくさのたきもの)」といいます。
六種の薫物は、
春「梅花(ばいか)」梅のような香り
夏「荷葉(かよう)」蓮の花を思わせる香り
秋「菊花(きっか)」菊の花のような香り」
冬「落葉(らくよう)」葉の散る哀れさを思わせる香り
「侍従(じじゅう)」ものの憐れさを思わせる香り
「黒方(くろぼう)」深く懐かしい、落ち着いた香り
侍従、黒方は季節を問わず使えたんだとか。
このお香の調合方法は現代にも伝わっているんですが、書物や作る人によって使う香料の種類や分量などレシピが少し違っているそう。
さらに、香料の産地や収穫した時期、混ぜる時の手順やさじ加減で出来上がる薫物の香りが変わってしまうんだとか。
なので、今も六種の薫物の練り香はあるけど、
平安時代の香りと全く同じにはならないみたい。
「ものの憐れさを思わせる香り」ってどんな香りなんだ?気になる。
あと、平安貴族たちも「六種の薫物」をそのまま使うのではなく、調合をほんのちょっと変えて自分だけの香りを作ったそうです。
平安時代の貴族にとって素晴らしい香りのするお香が作れるというのは教養や富がある証。
さらに、平安時代ではお香はそれぞれの個性やセンスの良さをひきたてるものでした。
現代はファッションやメイク、髪型などいろんな個性の出し方があるけど、平安時代の女性の衣装やお化粧は形式で決められてることが多いので自分らしさというのは出しにくい時代です。
平安時代の貴族のお香の使い方
平安時代のお香は練り香だったので炭火でくゆらせる使い方が一般的でした。
平安時代の貴族は部屋の中にお香の香りを漂わせるだけでなく、いろいろなお香の楽しみ方をしてました。
平安時代の女性は髪にも香りをつける
平安時代の女性はたまにしか髪を洗えないので、洗髪した時にお香を焚いている火鉢をそばにおいて香りをあおいで髪にしっかり匂いをつけました。
平安時代の女性の洗髪事情はこちら↓
平安時代の貴族は衣服にも香りをつける
あと、香りをまとうのに大事なのが衣服!
平安貴族たちは自分の着る服にお香の香りを焚きつけてました。
衣服に香りをつける時は「伏籠(ふせご)」という道具の中にお香を焚いた香炉を置きます。
竹や木で作った籠や、四角い枠に網を張った立方体の物、骨組みだけのようなものなどいろんな形があったみたいです。
で、伏籠の上に衣をかぶせることでお香の香りをたっぷりとしみこませます。
このおかげで誰かが部屋に入ってきたり、少し動いただけでもいい香りがふわっと漂うわけです。
これだけ香るってことは、現代なら確実にスメルハラスメント確定の柔軟剤と香水つけすぎな状態と思われる。
平安時代の貴族は小物にも香りをつける
その他に扇とか恋文を送る紙なんかにもお香の香りをうつしていたようです。
源氏物語の夕顔でも「色が変わるほどしっかりとお香を焚き蒸した扇」に詩を書いて差し出したのが恋の始まり。
平安時代の貴族のお香を使った遊び
さらに、平安時代の貴族たちには「薫物合わせ」という遊びがありました。
これは季節などにちなんだお題を決めて、自分で思い思いに原料を調合してお香を作り香りの良さで勝ち負けを競った遊びです。
たかがお香、されどお香、
平安貴族はお香で知性や感性、美意識の高さを表現したり、貴重な香料を入手できる!という財力を見せ付けたりしてました。
なので、平安時代の貴族にとってよい香りを作れるというのはとにかくステータスだったわけです。
平安時代のお香のその他の使われかた
その他にも、調合されたお香を混ぜて球状にした薬玉を端午の節句の贈答の品にした、とか
薬用効果があるとされた訶梨勒(かりろく)の実をかたどった袋にお香などを詰めたものを魔よけに使っていた、とか
使い方はいろいろあったようです。
ちなみに、この訶梨勒は室内用の香り袋の原型といわれてます。
探すとネットでも売られてるんだけど、これがまた、目ん玉とび出るくらいのイイお値段・・・↓
平安貴族のお香まとめ
まさか平安時代の貴族のお香が消臭目的だったとは・・・
もちろん、それだけでなく教養やセンス、財力のある証でもあるけど。
あー平安貴族、絵巻ではあんなに優美なのに、臭いのかぁ・・・
とショックを隠しきれないんですが、気をとりなおして平安貴族が使った練り香について調べてみましたよ↓
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